書評
ひきこもりの親へ向けられた一冊
評者:藤代この本は、主な対象として「引きこもりの親に読んでもらいたい」と記されている通り、ひきこもり自身とひきこもりの親の事が重点的に書かれており、「ひきこもり親子のコミュニケーション術」というような見出しまである。そのほかにも度々親との関係についても書かれている。筆者自身もひきこもりだったようで、ひきこもりの事については詳しく書かれており、その観点や体験から執筆され綴られた本になっている。
私はこの本を読んでいて、確かにこれはそうだなと、自分に当てはめてみると共感できる部分が多かった。ただ私が思うに、この本が全てかというと全てではないし、書かれていないこともあるため、一種の教科書として活用していただきたいと思う。
ひきこもり親子のコラボレーション
本書いわく「学校に行かない、働かない、家から出ない。それだけでは、ひきこもりにはならない、そんな状態を親に罵られて初めてひきこもりの誕生だ」とある。
ひきこもりとは親子のコラボレーションで、ドロンジョ様やボヤッキーのいないヤッターマンが存在できないのと同じ原理で、最低でも家族という社会があってはじめてこじれていくと書かれている。
著者のこの言葉に私は、つまり親にも責任があるのだと感じた。
「働きたくない」とは「怠け」なのか?
「働きたくない」は、怠けではありません。怠けとは人類があこがれる夢の世界、ユートピアだ。
怠けたいを実現するために科学は発達してきました。楽をしたいという健全な欲求を満たすために人類は進化してきたのです。
働いてる人ですら、怠けたいのです。
「働こう」という気持ちが、怠けパワーを生み出すのです。
(本書より)
著者の『「働きたくない」とは「怠け」なのか?』という問いに私は、人類はそもそも楽をしたいし効率化を高める為に進化したのだから、怠けたいという事は最もだと感じた。
ひきこもりの自立とは何か?
自分で考え、自分で決断し、自分で行動することです。必ず失敗します。他人の言うとおりにやっておけばよかった、そんな後悔が自立にはつきものなのです。
支配からの卒業は、ほろ苦いメモリーの蓄積になります。
完璧な考え、完璧な行動もどういうわけかうまくいかないものなのです。
何がいったい悪いのかが、わからない。自立した人間が必ずはまる落とし穴です。自分の自由になるたった一つのもの、自分を手にすることが自立なのです。
(本書より)
著者のこの言葉に、ひきこもりの自立の近道というのは自分を見つめる事なのかもしれないと思った。
おわりに
本書には「ひきこもりというのは決して落ち目ではない」という著者の言葉が書かれている。
安心ひきこもりライフはこの社会の外側に転げ落ちても、どうにか生きていくための智慧です。変わらない社会の内側と外側を右往左往しながら生き延びていくのです。社会の外側に放り出されてしまわないように、たゆまず「努力」している。そういう人が社会の外に放り出されることが現在の社会問題なのです。ひとりぼっちにならないようにつながりを持つと同時に、ひとりぼっちでも生きていける技を身に着けることの両方が必要です。ぼっちとぼっちが出会い、競争ではなく協力し合うようになった時、社会はよい方向にすすむのではないでしょうか?
(本書より)
以上のように著者は締めくくっている。
書籍データ
タイトル | 安心ひきこもりライフ |
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著者 | 勝山 実 |
出版元 | 太田出版 |
初版発行 | 2011/07/30 |
amazon.co.jp | https://www.amazon.co.jp/dp/4778312589 |