生きづらさから脱け出す実践法―「意識」と「世界」を味方につける七つのステップ

書評
生きづらさから脱け出す実践法

評者:岩間 華奈子

この世界の仕組みを知ることが、生きづらさを脱け出す答えになる。

「生きづらい」と感じる意識は、なぜ生まれるのだろう。生きづらいと感じたとき、私たちは何を「生きる意味」として生きていけばいいのだろう。

生きづらい、生きにくい。そう思い悩み、身近な存在やカウンセリング・セミナーなどで相談してみたり、心理学や自己啓発の本を参考にひたむきに努力してみる。だけどどこかで息が詰まり苦しさを覚え立ち止まり、そんな自分を責めて自己嫌悪し、また生きづらさにズルズルと引き戻されていく。

無限にも続くようなこの生きづらさのループから脱け出すには、いったい何をどうしたらいいのかと頭を悩ませる人は少なくない。
 
 
 
本書は、そういった「生きづらさ」を感じ、様々な方法を試したけれど生きづらさから抜け出せないと悩む方、自分にとって心地いい人生を送るための考え方を身につけたい方、自己の探求だけでなく取り巻く環境や世界の仕組みを含め、広い視野で生きづらさを解き明かしたい方など、今現在生きづらさを感じている当事者にぜひおすすめしたい一冊だ。
 

本書の概要

著者は生きづらさ専門カウンセラーである「しのぶかつのり」氏。うつワーカーのノウハウ情報局局長、日本トランスパーソナル学会常任理事。

生きづらい人のための心の相談所「Brain with Soul」代表で、カウンセリング、コーチング、ワークショップなどを行っている。自身も長年虐待被害の後遺症、植物嫌悪症や生きづらさにあえぎ、そこから抜け出す道を探し求めてきた一人でもある。
 
 
 
第一章では「本当の自分はどこにいる?」をテーマに、「本当の自分」「ありのままの自分」とはどこにいるのかをわかりやすい例えで説明しながら探求していく。

第二章では私たちの「意識」に注目し、「なぜ生きづらさが生み出されるのか」の疑問への答えを物理世界・自然史の流れを用いて丁寧に説明していく。

第三章では脳の「扁桃体」に焦点を当て、それに上手に対処することによって生きづらさから脱け出すことができる仕組みと、そのメカニズムを解明する。

第四章・第五章では、呼吸法や思考法などを用いた実践法やワーク、その習慣づくりを紹介している。

また、多くの場合生きづらさを解消していった先に「生きる意味」を喪失してしまう危険性がある。第六章では「この世界の正体」と題して、この世界の正体に迫りながら生きる意味をどのように見つけていくのかを解き明かしていく。
 
 
 
本のタイトルでも「実践法」と銘打っているだけに、生きづらさを脱け出す手法として「対処療法」と「根治療法」のふたつを軸にしたワークで、文中のワークシートに書き込んだり、呼吸法で体や心の変化を感じながら実践していくことができる。

本書を読み私も実践のワークをやってみたが、ただ読んで言われた通りにして終わりというわけではなく、実際に紙に書いて目に見える形になったことで自分の現状や思考の癖を可視化でき、新しい気づきを多く得られた。
 
 
 
全体を通してたとえ話や体験談を交え、読み手に寄り添うわかりやすい表現で書かれている。情報量は多めだが、著者も言うようにすべてを無理に理解しようとしなくてもいい。ぼんやりと童話や物語を読むような感覚で読み進めていけば、徐々に具体的に理解できるような構成になっている。

著者独自の読み手と足並みを揃えながら共に進むための「細やかな配慮」を言葉の端々に感じ、全編通してとても安心感を持って読み進めることができた。
 

生きづらさから脱け出すカギは、「三理一体の法則」と「扁桃体」

しのぶ氏は生きづらさから脱け出すカギとして「三理一体の法則」を挙げている。心は「心理」、体は「生理」、環境は「物理」。この三つを整える「三理一体の法則」で身近な世界を改善していくことが生きづらさを打破する力になると。

そしてもうひとつは「扁桃体」だ。扁桃体とは「心のアンテナ」で、目の前の現実を「快か不快か」で判断する。つまり、この扁桃体によってこの世界がいったいどんな世界なのか、「この世界の受け止め方」が決まるという。

扁桃体の敏感度は人によって違う。生まれつき決まっている場合や、幼少の頃の体験によってもより敏感になるかどうかが分かれる。そしてその後その敏感度を変えることはできないと現時点では考えられている。

生きづらさを感じている人は、この「人よりもより敏感な扁桃体」で生きているということになる。だがそれは悪い面ばかりではない。敏感な扁桃体を持つからこそ様々な経験や感情の揺らめきを感じてきたことで、「強烈な幸せ」を感じることができる。
 
 
 
『扁桃体が敏感な人には、扁桃体が敏感な人ならではの、扁桃体が敏感な人にしか生きられない、感動にあふれた人生が生きられます。敏感な扁桃体には、それを可能にする「能力」が秘められているのです。』(本文より)

自分の扁桃体の在りようを理解し、それに合った人生を選択していくこと。そしてその敏感な扁桃体をいたわる生き方を身につけることで、生きづらさから脱け出す仕組みが整う。そして「三理一体」で身近な世界を改善していくことで、自分だけの「心地よい人生」へと歩みを進めることができるのだ。
 

おわりに

目に見える世界だけが正解でも不正解でもない。どこまでもおぼろげで曖昧な世界の中で、私たちは揺らぎ、流され、立ち止まり、それでも生きることを進めていく。

『この世界は、容赦のないほど美しく、容赦のないほど気味が悪い。容赦のないほど穏やかで、容赦のないほど激しい。容赦のないほど優しく、容赦のないほど残酷。そんな両極で満たされているのです。そして、その容赦のない両極を包み込んで成熟させた先にこそ、生きる意味が見え隠れしているのです。』(本文より)
 
 
 
生きる意味は生きづらさに包み隠されながらも、私たちの内側と外側、ありとあらゆる方向から私たちに見つけてもらうのを待っている。生きづらさから脱け出た先に、あなただけの揺るぎない生きる意味を見つけられる。そのきっかけになる一冊になればと私は願っている。

書籍データ

タイトル生きづらさから脱け出す実践法―「意識」と「世界」を味方につける七つのステップ
著者しのぶ かつのり
出版元コスモスライブラリー
初版発行2017/06/??
amazon.co.jphttps://www.amazon.co.jp/dp/4434235508