敏感すぎる自分を好きになれる本

書評
HSP(とても敏感な気質)を生きる勇気に変えるヒント

評者:岩間 華奈子あなたは「HSP」という言葉をご存じだろうか。HSPとは「Highly Sensitive Person」の略。和訳すると「とても敏感な人」という意味である。

HSPの特徴を一部挙げてみる。例えば、

・他人の気分に左右されやすい
・まぶしい光や強いにおい、大きな音が苦手
・すぐにびっくりする
・とても良心的である
・短時間にたくさんのことをしなければいけない時、混乱してしまう

など。(本書HSPチェックリストより一部抜粋)
 
 
 
このHSPは、どの社会にも15~20%の割合で存在するということが判明している。つまり、5人に1人はこの「敏感すぎる人」がいるということだ。その反面、日本ではまだまだその知名度や概念は浸透していない。心療内科や精神科などの専門医でも、HSPという言葉さえ知らないことが多いというのだ。

本書ではそんなHSPについての特徴と、それに伴う生きづらさの原因を解き明かしながら、敏感すぎるゆえの生きづらさを「生きる勇気」に変えていくヒントをわかりやすく伝えていく。
 

本書の概要

著者は長沼睦雄(ながぬま・むつお)氏。北海道のとかちむつみのクリニックの院長・精神科医で、日本では数少ないHSPの臨床医である。
 
 
 
第一章・第二章では、HSPの特徴と生活の中での現れ方を脳や自律神経などの働きと絡めて説明している。

第三章・第四章では、敏感ゆえに生まれる生きづらさをどう軽減させ、特性としての敏感さをどう生かしていけばいいか、その方法について書かれている。

第五章では、非HSP、つまりHSPではない人のHSPの人との付き合い方をまとめている。併せてHSPの子供を持つ親やHSPの子供と触れ合う機会を持つ教育関係者などに向け、大人としてのHSPの子供との関わり方なども丁寧に紹介されている。
 
 
 
臨床医としての豊富な経験をもとに、全体的な構成もわかりやすく優しい表現で前向きにまとめられている。悩んだときにそのつど手に取り、必要な箇所だけを参考にするのもいいだろう。

敏感すぎることに悩む本人のみならず、自分の子供や家族・身近な人にHSPが思い当たる人など、幅広い層にぜひ一度読んで欲しい一冊だ。
 

HSPを知れば、「敏感すぎる自分」を好きになれる

HSPは性格ではなく、生まれ持った気質であると著者は論じている。気質とは動物が先天的に持っている刺激などに反応する行動特性であり、性格とは全く異なるものだという。

先に書いた通り、社会の15~20%の人はHSPといわれている。言い換えれば、それ以外の約80%の人はHSPから見ると「自分より鈍感な人たち」ということになる。つまり敏感なHSPの人は、周りに大多数の「自分より鈍感な人たち」に囲まれて、大多数の「自分より鈍感な人たち」の価値観や感覚の中で生きているといえる。
 
 
 
自分よりも鈍感な人にその敏感さゆえの辛さを理解してもらいたくても、感覚の問題は当事者たちでしか共感できない部分がある。理解を得られずにむしろ「弱い」「神経質」「気が小さい」「もっと鈍感に生きればいいのに」などという無言の圧力をも、敏感な人は感じ取ってしまうのだ。

敏感すぎる人は敏感すぎることに悩み、人から理解されない悲しみや疎外感、劣等感を抱え、自己否定してしまうことも少なくない。だがその反面、そんな沢山の傷を抱えているからこそ人の痛みを知り、その心に寄り添うことが出来る力を備えている。

HSP気質の人は謙虚で誠実で心優しく、豊かな内面と感受性を持つ、とても魅力的で素敵な人間が多いと私は感じている。そんな素晴らしい長所をすべて打ち消すのではなく、HSPである自分を知り、天性の特性として認めてあげること。そしてはみ出てくる違和感や生きづらさを少しでも軽減できる「生きる術」を会得することが、自分を好きになれる大切な道筋なのだと感じた。
 

おわりに

生きづらさをなくすためには、「知る」「対応する」「心構え」の三つが大切だと著者は語っている。

自分はどういう人間かを「よく知り」、そこから見えてきたものに「対応策と対処法」を実践する。具体的な方法を持つことが出来たら、今現在の自分を認め、そこからより生きやすい自分になるための「考え方や心構え」を培っていくことが大切なプロセスなのだと。
 
 
 
『自分と正面から向き合い、そのうえで生きづらさを捨てると覚悟を決めること、これができてはじめて、HSPとしてラクに生きていく為の「心構え」を持つことができるのです。」(本文より)

生きづらさは無くしていいものなのだ。いつまでも「生きづらい自分」でいる必要はない。当然、変わることは恐怖を伴う。それでも、生きづらさに死ぬまで頭を垂れ続け、自分を苦しめ続ける必要もどこにもないのだと私は思う。

その生きづらい自分から、一歩でも抜け出られるきっかけになる一冊になれればと心から願っている。

書籍データ

タイトル敏感すぎる自分を好きになれる本
著者長沼 睦雄
出版元青春出版社
初版発行2016/05/10
amazon.co.jphttps://www.amazon.co.jp/dp/441303998X/