孤独の達人 自己を深める心理学

書評
誰にも左右されず、自由に孤独を生きるための「孤独入門書」

評者:岩間 華奈子「孤独」という言葉に、皆さんはどういった印象を持つだろうか。

寂しさ、みじめさ、疎外感、仲間外れ、ひとりぼっち感。どうにもネガティブなイメージを持つ人は少なくないと思う。反対に、昨今「おひとりさま」という言葉が浸透してきたように、社会的にも孤独でいること、ひとりの時間を過ごすことに対してポジティブな捉え方をする風潮が広まってきてもいる。世の中のニーズとしても、ひとり孤独に自分の時間を自由に過ごしたいと思う人が多くいるということだ。

では私たちはこの「孤独」とどう付き合い、どう生き方に反映させていけばいいのだろう。

本書は大学教授、教育学博士、日本トランスパーソナル学会会長、臨床心理士、そして日本カウンセリング学会認定カウンセラーとして精力的にカウンセリング活動を続けている諸富祥彦(もろとみ・よしひこ)氏によって書かれた、「孤独」を肯定的に捉え自由に生きていくための「孤独入門書」である。
 
 
 
心理学という副題から難しい印象を持たれるかもしれないが、わかりやすくかみ砕いて説明されているため、心理学をよく知らない人でもするすると読み進めることができる。

「孤独」を深く掘り下げることで、自分と照らし合わせながら引きこもり問題への探求をもしっかりと深めることができる一冊であると私は思う。

ただ、全体的に作者の主観的な主張を強く感じる部分が所々見受けられる。例えば、「なぜ自分らしく生きることができないのか。厳しい言い方ですが、心が未熟だからです」(本文より引用)。こういった言い回しの方が逆にサバサバとしてわかりやすいと思う方もいるかもしれない。

今現在苦しく悩みの渦中にある人よりも、その悩んでいる人の支えになるべく見聞を深めたい人、冷静に自分を見つめたい人や、自分の生き方を一歩先へ進めて行きたいと強く思う人におすすめしたい。
 

「単独者」として、自分の内面を見つめ生きていく

本書いわく、「孤独」には捉え方によって3つの種類がある。「孤立」「ひとり」「単独」の3種類である。

「孤立」は社会的な孤立。自分で選んだのではなく、否応なく訪れる「非選択的な孤独」。「ひとり」は自ら進んで他者とのしがらみから解放され、自由なひとり時間を選択していく「選択的孤独」。「単独」は世の中の騒がしさから離れて徹底的に孤独に徹し、自己の内面を深く深く見つめていく「自己探索の深い孤独」である。

作者はその中でも「単独」に焦点を当てている。周りの他人のご機嫌を取ることもなく、自分自身に真摯に向き合う。そして自分が本気で選択した人生を生き、深く交流できる人とだけ付き合い関係性を育んでいく。そんなひとりの「単独者」として生きることを勧めている。
 
 
 
また本の後半には「フォーカシング」という、自分の内側と深くつながる方法が簡単にではあるが紹介されている。私自身実際にフォーカシングを継続して行っている身として読んでみると、具体的なやり方よりもあくまでもこのような方法がある、というさわりの部分なのだと感じた。

この本をきっかけにフォーカシングへの知識も併せて深めるとより良いのではないかと思う。
 

「引きこもり」への理解を、「孤独」の面から深めていく

引きこもりに対しての理解を深めようとしたとき、「孤独」のフィルターを通して見てみると「なるほど繋がる」と感じることが多々あった。

例えば、「なぜ人は引きこもるのか」と考えたときの一つの答えとして、「ひとり孤独に誰にも邪魔されない自分の時間を過ごしたい」という気持ちがあると私は考えている。見失ってしまった自分というものを「閉鎖的で誰も中に入れたくない空間」に自分だけを置いて、少しずつ少しずつバラバラに飛び散ってしまった自分の欠片をたぐり寄せる時間を過ごす。

本書の中で、「ひとりの時間は人の中に帰っていく道を開いてくれるが、孤独の時間は自分に帰っていく道を開いてくれる」という、アメリカの心理療法家ムスターカスの言葉がある。「ひきこもり」はこの「人の中へ帰っていく時間」と「自分に帰っていく時間」の両方の時間を過ごそうとしているのではと思うのだ。
 

おわりに

あとがきで作者はこう語っている。

『私は、孤独である。私はこれまでの人生で、そもそも、「誰かに本当に理解してもらえた」「本当にわかってもらえた」と思ったことがない。』

「たとえこの世界に、自分の本質を理解してくれると思える人が誰一人として存在していなくても・・・(中略)・・・こうして、深い、深い孤独において、自分の内側の最も深いところとつながっていられるとき、同時に私は、逆説的に、最も強く、他者とのつながりを感じることができる。」
 
 
 
自ら孤独というものを受け入れ、それを追い求めてきた作者の姿は、豊かな人間性に溢れているように感じた。孤独というものは人間の内面を映し出す鏡のようである。だからこそ、その孤独から目をそらさずに自分自身と向き合っていくと、いかに自分というものが繊細で不完全で愛らしいものかが浮き彫りになってくるのだと思う。

どこか空虚で悲しい印象を持たれがちな「孤独」とは、突き詰めれば「生きる醍醐味」となるのだと本書は強く教えてくれる。

書籍データ

タイトル孤独の達人 自己を深める心理学
著者諸富 祥彦
出版元PHP研究所
初版発行2018/08/16
amazon.co.jphttps://www.amazon.co.jp/dp/4569840515/